愛の形はそれぞれ
いつだったか、ホムラが半分道楽で入院したとき、彼は私が来ないことに拗ねて、記憶喪失のふりをしようとした。そして今、また同じような状況になっている。数週間ぶりに訪れた彼の家、インターホンを押すとそっけない声が聞こえた。
「どちらさま?」
「……連絡もしなかったことは謝るよ。ごめんなさい。とりあえず入れてくれない?」
するとインターホンはぷつりと切れ、数秒後には唇を尖らせたホムラが玄関の扉を開けてくれた。お邪魔します、と立ち入ろうとすると、邪魔するなら帰ってね、と嫌味が飛んできた。本当に帰ろうとしたら引き止めるくせに、とは思ったけれど言わなかった。
アトリエは少し荒れていた。何かを描き殴ったであろうカンバスは塗り潰されていて、床の上にはやはり描き殴られたクロッキーが丸められていくつも捨てられている。
「君が連絡もくれないから、創作が進まなくてね」
「それって私のせいなの?」
「そうだよ。僕を蔑ろにして、それなのに夢の中では簡単に会いに来るんだ。だから目覚めたくなくなった。とんだ悪夢だよ」
ひどい言われようだけど、それだけ私を想ってくれているとわかると嬉しくもある。ホムラは文句を言いながらも、ソファーの上に私が座れるだけのスペースを簡単に用意してくれて、お茶も淹れてくれる。
並んでお茶を飲み、やがて少し落ち着いたようにホムラは小さく息を吐いた。
「いっそ御伽噺のように眠り続けてしまおうかと思ったよ」
「そうなったら、私が起こしに来るよ」
「どうやって? 王子様みたいに?」
私は小さく笑うと頷いて、それから少し背伸びをしてホムラの頬に唇を寄せた。ホムラは一瞬だけ顔を赤くして頬を押さえたけれど、すぐにその手を離してはにかんだ。
「僕の唇はそこじゃないんだけど?」
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