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愛の形はそれぞれ

朝から散々だった。
近所のおばさんにはゴミの分別で叱られて、私のじゃないという説明に15分もかかってしまった。
協会についたらついたで、山のような書類仕事が待っていた。
それなのに今日に限ってワンダラー発生の緊急出動が二回もあった。
そのせいで書類も片付かず、残業をしてやっと終わったと思って協会を出たら予報外れの大雨だ。
「ほんと、ついてない……」
誰に言うでもなくそう呟いて、屋根の下から厚い雲のかかった暗い空を見上げた。
今日は大切な約束があったのに、仕事が終わったら病院まで迎えに行くねと言ってあったのに、これじゃあ待ちぼうけさせてしまっているだろう。
今日はもうやめよう、と連絡をしようとスマートフォンを取り出したところで、目の前の道路に見慣れた車が止まった。
運転席の彼はこちらを見ると、窓越しに手招きする。
「レイ!」
駆け寄って、急いで助手席のドアを開けて滑り込む。
たったこれだけの距離なのに髪の毛はかなり濡れてしまった。
レイはタオルを取り出すと、私の頭を拭いてくれる。
「待たせてごめん……」
「何事もないならよかった。お疲れ様」
その言葉に胸がじんと熱くなる。
いつだったか、レイは私に会うと甘いものを食べることが減ると言っていた。
私のことをお菓子かなにかとでも思ってるの、とその時は少し呆れたけれど、私も同じみたいだ。
疲れたときに会うレイは、甘い甘い御褒美みたいだ。
この御褒美があれば、どんなことだって乗り切れるのだ。
「なにを笑っている?」
「今日は厄日だと思ってたけど、この時間のためにあなたが仕組んだの?」
笑いながらそう告げて、袖を引っ張って目を閉じる。
同じように小さく笑う声が聞こえたあと、甘い甘い唇が降ってきた。

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