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愛の形はそれぞれ

うとうとしていた真夜中、ふと電話の着信に起こされた。発信者の名前を確認して、すぐに電話を取る。
「もしもし?」
「寝てたか?」
相手の声がほんの少し遠ざかる。このままでは切られてしまう、と咄嗟に思って、必死にあくびを噛み殺した。
「寝てないよ」
電話口から低い笑い声が聞こえる。
協会に言われるがまま、遠く離れた地に出張に来た。出張に来るとなぜかいつもシンに会うのに、今回ばかりはそんな偶然もなかった。寂しい、と少しは思うけれど、あと三日もすれば帰れる。
ふと、電話口から聞こえる歌が耳に入った。とある映画のエンディングテーマだ。
「映画を見てたの?」
「ああ。時間が空いたんでな」
「その映画、確か続編があったよね。同時に再生したら一緒に見てる気にならないかな」
臨空とここでは時差はほとんどない。ただ赤道を挟んでいるせいで、暖かな臨空と裏腹にこちらはとても寒い。だから一緒に見ている気になりたかった。気分だけでも近くにいたかった。毛布に包まってスマートフォンを操作し、今シンが見ていた映画の続編を探す。
「俺に会いたいのか?」
からかうような言葉に、いつものように意地を張った返事が咄嗟に出てこない。そのぐらい、一人ぼっちのここは寂しい。
「……うん」
一瞬の息を飲む音のあと、ソファーから立ち上がるような衣擦れの音がした。
「一晩待て。すぐに行く」
「え、来なくていいよ。三日もすれば帰るんだし」
「俺がお前に会いたいんだ」
来なくていい、今すぐ行く、の問答を繰り返し、その問答がどう決着したのか、私は途中で寝落ちてしまって覚えていない。
けれど翌朝、ホテルのロビーでソファーに座る、見慣れた背中が確かにあった。

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