planetarium
※伝説ストーリー「指間の流星」のネタバレを含みます
女王になってから数年。
毎年即位日を祝うこの日が憂鬱だった。
数年前のこの日、遠くへ旅立ってしまった彼を思い出すから。
広場では人々が賑わい、日が暮れ始めると子どもたちが手を繋いで帰っていく。
花火が咲いたのを合図に、バルコニーに出て手を振れば、広場に集まる人々もこちらを見上げて手を振った。
私はここに留まり続ける。
彼が守りたかったはずのこの星を見届ける。
やがて祭が終わり、一人の正殿に戻る。
バルコニーへ続く窓を閉め、そして窓越しに星を見上げる。
あの星はなんて言ったっけ。たしかウルル星と彼は言っていたか。
何がウルル星、俺達の星よ、とぎゅっと胸の前で手を握った。
私にとっての星は、一人しかいないのに。
「会いたい……あなたに会いたい……」
誰にも聞かれない言葉が、誰にも見られない涙とともに零れ落ちた。
故郷と呼べる星から遠く離れて、長い時間が経った。
今あの星はどうなっているのか。
知ろうと思えば知ることはできただろうが、調べる気にはならなかった。
知ったところで、戻るつもりはないのだから。
夜空を見上げて、遠い星に向かって手を伸ばす。
遠い故郷に置き去りにした彼女を思い出した。
彼女はどうしているだろうか。
それだけが気がかりだった。
悪いようにはされていないはずだ。そのために彼女が女王になるよう仕向けたのだから。
この星からウルル星は見えない。
それでもその星が変わらずそこにあることを知っている。
いつかあそこへ、彼女を連れて共に。
俺達しか名前の知らない、あの星へ。
夜空に向かって手を伸ばすと、指の隙間から流星が零れた。
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