main

fly you to the star

この星に着いてしばらくしてからのことだった。
平和すぎるほど平和な時間の中で、いくつものモノが生まれては消えていった。
そんないつか消えていくなかの一つに、とある歌があった。
その歌が生まれたのは今から80年ほど前だっただろうか。
初めて聞いたのはもう少し後だった。
それからしばらくして、何かのアニメの主題歌にも使われた。

月に連れて行って。
他の星の春を見せて。

そんな風に歌う声に、遠い昔を思い出した。
遥か昔、そんなやりとりをしたことがあった。
その時はただ彼女を連れ出したくて必死だった。
ようやく見つけた自分だけの星に一緒に行こうと誘った。
それに対して彼女は、他の星の春はどんな季節なのかと呟いた。

その歌はその後も、無茶とも言える願いを口にする。
そんな無茶な願いだって叶えて欲しいと。
それと同じような想いを何百年だって抱き続けている。
どんな無茶な願いだって、あんたが望むなら叶えてやると。
そして最後の歌詞を聞いて、ようやく腑に落ちた。

俺はあんたに、「愛している」と伝えたかったのだ。

Category: