言い換えるなら
二人並んでソファーに座って、ぼんやりとテレビを見ていた時のことだ。
ジャズのスタンダードナンバー、と言いながら、どこかで聞いたことがある曲が流れる。
確か、数年前にはアニメの主題歌にもなっていたような気がする。
聞いたことはあるが、歌詞はいまひとつ知らない。
そう言うと左近は、小さく笑った。
「恋の歌だよ」
「恋?」
詩人はいつだって、単純な気持ちに沢山の言葉を使う。
たったひとつの気持ちの為に、時間をかけて音を乗せる。
音楽と言葉で気持ちを伝えたい。あなたの為の歌。
けど、私の伝えたいこと、伝わるだろうか。
聞いていくうちにわかってくれるだろう。
そのような前置きがある、と言ってから、左近は小さく歌った。
「私を月に連れて行って。星空の間で遊びたい。木星と火星の春を見てみたい。
わからない? つまり、手を繋いでほしいってこと。
私の心を歌でいっぱいにして。ずっと歌っていたい。私が待ち望んでいた人。
だからお願い、変わらないでいて。だからさ、つまり……」
ぴたりと声が止まる。
曲の終わり、という感じでもなく、不思議に思って左近を見上げた。
「つまり、何だ?」
「野暮だねえ、あんた」
頬を指先で撫でられて、漸く理解した。
詩的な表現というのはどうにも難しい。私には向かないようだ。
目を閉じれば、私が望んでいたものがくる。
あいしてる、と小さく囁かれながら。
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