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特等席

私のスマホに突然表示された着信画面には『アキラ』の名前が表示されていた。
シンではなく、アキラが個人的に私に用があるなんて珍しい。
それに明日は、それなりに大きな『仕事』があると言っていた。
今日はその準備をするようなことを零していたのに。
「どうかした?」
「ハンター、助けてくれないか」
電話を取ると、元気のない声が聞こえる。どこか焦っているようにも思う。
ふざけているわけではなさそうだが、アキラが私に助けを求めたりするだろうか。
「あなた、本当にアキラ?」
「なんだよ、カゲトの声に聞こえるって?」
「聞こえないと言ったら嘘になるけど……なんだかしおらしいね」
「実は……あっ、ボス!」
一瞬の物音のあと、電話口の声が変わる。
アキラやカゲトよりよっぽど慣れ親しんだ声だった。
「何でもない。しばらくこっちには来るな」
その低い声もどこか元気がない。いつもの余裕も鳴りを潜めている。
例えて言うならば、風邪を引いた時の私の喋り方にどこか似ているが、まさかあのシンが体調を崩したのだろうか。
「何かあったの?」
「何もない」
「何もないんだったらそっちに行くよ」
深い溜息が聞こえる。
こういう時にお互い一歩も引かないのは、私も彼もよくわかっているはずだ。
けれど今回ばかりは、シンは早々に諦めて身を引いた。
「……流行りモノの風邪みたいなものだ。気にしなくていい」
「風邪を引いたの? シンが?」
本当に体調不良だったなんて。
私が体調を崩したことは何度かあったが、そのたびに甲斐甲斐しく世話を焼いてくれて、本人にはまるで感染らなかったのに。
「あなたに勝つなんて、一体どんなウイルス?」
「水痘帯状疱疹ウイルスだ」
聞き馴染みのない名前だが、字面はなんとなく想像できる。
字面が想像できれば、どんな病気かはすぐに思い当たった。
「大丈夫なの? そっちに行こうか?」
「お前にも感染るぞ」
「私は子供の頃に経験済みだから大丈夫だよ」
大人になってから罹患すると重症化すると聞く。
今頃シンの体には発疹が出ていたりするのだろうか。
体だけじゃない。あの整った顔にも、赤い斑点が現れているかもしれない。
何か必要なものがあるかと聞けば、シェフも執事もお抱えの医者もいるのだから問題ないと返された。
精々気を付けて来い、の言葉に従って、一応マスクだけはして自宅を発った。

基地に行ってみれば、出迎えてくれたのは今日に限っては執事だった。
いつもは大抵シンが迎えに来てくれるし、私が勝手に来てもシンが扉を開けてくれるから、ある意味でこれは新鮮だ。
促されるままシンの部屋にそっと立ち入ると、夜だというのにシンはベッドの上で横になっていた。
耳が赤くなっている。そっと頬に手を当てると、シンはゆっくりと目を開いた。
「本当に来たのか」
「熱があるの?」
おもむろに起き上がった、その首筋には発疹が見える。
顔に出なかったのは不幸中の幸いだっただろう。
さすがに掻きむしったりはしていないようで安心した。
いくら体とはいえ、跡が残っては気の毒だ。
「とりあえず大丈夫そうで安心したよ」
「これが大丈夫に見えるのか?」
「命に別状はなさそうで」
憎まれ口を叩く元気があるなら問題ないだろう。
そうなると、目下のところ残された問題は一つだけだ。
「それで、明日の『仕事』はどうするの?」
それなりに大きな『仕事』だと言っていた。
どこで何をするのか、私は全く知らされていないということは、少なくともEVERやエーテルコア関係ではないということだ。
「他の日に変えられないの?」
「そんな常識が通じる相手だと思うか?」
「思わないけど……」
ダメ元で聞いてみたが、やはりそんな話を聞いてくれる相手ではない。
そもそもシンの『仕事』の相手で、常識が通用する相手なんていたことないけれど。
とはいえ、私に関係のない内容で、相手も非常識だというのなら、アキラはなぜ私に助けてくれなんて電話をしてきたのだろう。
今回、私ができることは何もなさそうに思える。シンの看病をしろと言うつもりもないだろう。
「背に腹は代えられないか。アキラの思いやりを無下にもできないしな」
「どういうつもり?」
「幸い、奴らに『暗点のボス』の顔は割れてない」
シンは含みのある視線をこちらに向けて、私の顔をじっと見た。
その視線に嫌な予感がする。
「なに? まさか……嘘でしょ、やめてよ」
「その『まさか』だ」
軽く手を取られる。その手も同じように熱くて、大丈夫だとわかっていても心配になった。
シンは私の心配など知るはずもなく、指先で私の手の甲を撫でた。
「今日からお前が『ボス』だ」
「最悪……」
最初からそれを想定していたのだろうか。
少なくともアキラは私に助けを求めてきたのだからそのつもりだったのだろう。
「どうして私なの。アキラとカゲトがやればいいのに」
「俺を正しく理解しているのはお前をおいて他にいないからな」
そう評価されてるのは素直に嬉しいけれど、本当に私に務まるだろうか。
もし失敗しても俺がそれを本当にしてやる、と気休めを言われるが、全く気は休まらない。
「アキラとカゲトをつける」
そう説得され、仕方なく頷くしかなかった。
彼はいつも私を助けてくれるのだから、たまには私も彼の役に立たなければ。
話し疲れたのか、シンは私が頷くと再び横になった。
それ以上何も言わなかったけれど、なんとなく彼が眠るまでは傍にいた。

翌日、不本意ながらも着慣れてきた赤いドレスに身を包み、使用人たちの手を借りながら髪とメイクを整える。
胸元のブローチはカメラ、両耳のイヤリングは盗聴器、さらに片耳には小型のイヤホンを忍ばせた。
運転席にはアキラ、後部座席にはカゲトが待ち構えている。
車の後部座席、カゲトの横に乗り込んですぐに、イヤホンからシンの声が聞こえる。
「聞こえるか」
「聞こえるよ」
「感度は問題なさそうだな」
突然、カゲトが持つスマホが小さな通知音を鳴らした。
このスマホも私のものではなく、今回のために一時的に手に入れただけのものだ。
私のスマホを持っていって盗まれたり情報を抜かれたらたまったものじゃないし、失敗にも繋がる。
カゲトに持たせてあるのも、私が『ボス』らしく振る舞うため、という理由だった。
「スマホに情報を送った。今回の相手だ」
カゲトから受け取り、画面に表示された人物を見る。
初老といった雰囲気の男性だ。その顔に見覚えがある。
「この人って……」
「知り合いか?」
協会の出資者の一人だ。
この人が、というよりは、この人の会社が、だけど。
会社自体は臨空でもよく聞く、最近業績を伸ばしているITインフラ系の企業だ。
この男自身は社長ではないものの重役には違いない。
間違いなく『表』の企業のはずだった。
「急に伸びてきた企業にはそういう裏の顔が付き物だ。こいつは『表』にも『裏』にも顔がある、ある意味で一番厄介な奴だな」
どちらの世界にも幅を利かせられるだけの席があるのは、確かに面倒だ。
指定された場所が臨空とN109区の境目あたりにあるのも、相手を知れば納得できる。
高層ビルの上階、各席がほとんど個室になっているようなレストランだ。
そこが、ホームとも呼ぶべき場所なのだろう。
「危険だと思ったらすぐ撤退していい」
「できるだけ、やれることはやるよ」
車はしばらく走ってから、ようやくその足を止めた。
情報通りの高層ビルだ。
アキラとカゲトを両脇に控えさせたまま入口を抜け、受付でレストランに来た旨と相手の名を告げる。
係員は二言三言で納得して、レストランへ上がるためのカードキーを貸し出してくれた。
根回しは充分にされているようだ。
エレベーターに乗り込みながら、階数を押す代わりにカードキーを差し込む。
隣りにいるカゲトが、私の耳に静かに口元を寄せた。
「気を付けろよ、ハン……『ボス』」
「わかってるよ」
このビル全体が敵だといっても過言ではない。
エレベーターの中で、ドレスの中に隠し持った銃を服越しに触って確かめた。
人間相手に使うものではない。
できれば使いたくないけれど、いざとなったら仕方がない。
その覚悟を決めて、到着を告げたエレベーターから降り、すぐ正面のガラス扉をくぐった。
お待ちしておりました、とわざとらしく恭しい態度を取るボーイに案内されるまま、一番奥の個室へ通される。
出入り口から最も遠く、スタッフルームに最も近い個室だ。
やってくれる、と早速舌打ちが飛び出しそうだった。
ボーイに開けられた扉から中に入れば、テーブルに着いていた男が立ち上がった。
「初めまして。応じていただきありがとうございます」
「自己紹介は結構。あなたのことは知ってるわ」
男を片手で制しながら、引かれた椅子に腰を降ろした。
アキラとカゲトはすぐに私の両脇に控える。
それを見て男ももう一度着座した。
広くない部屋の中にはその男だけだ。少なくとも目につくところに他の人間は見えない。
この部屋に隠し扉でもない限りは。
男は私を上から下まで値踏みするように見回してから、僅かに怪訝な顔をした。
「あなたが暗点のボスですか?」
「ええ。何か問題が?」
「シンという男だと聞いていたもので」
バレてるじゃない、と遠くにいるシンを恨む。
目の前の相手に悟られないように、どうにか頭をフル回転させて言い訳を絞り出した。
「彼は弾除けよ。彼をボスだと思わせていたほうが都合がいいの。見てくれがいい男のほうが三下は納得するでしょ」
「私は評価されたと思っていいのですね?」
「暗点のボスがそう簡単に姿を見せるわけにはいかないもの」
耳に聞こえる小さな笑い声に、これでいいんだよね、と不安になる。
男は、今度は両脇のアキラとカゲトを交互にちらりと見た。
「彼らは?」
「ただのカラスよ。私に危害を加えない限りは動かないし、彼らには目も耳もないから、安心して」
ここで起きたことが外に漏れることはない。
そう告げれば、相手はようやく、ひとまずは納得したらしい。
けれど纏う空気は揺らがないから、完全に油断したわけではないだろう。
ボロを出す前にさっさと話を終えて切り上げよう。
用件は、と聞こうとして口を開きかけたところで、ボーイがグラスとシャンパンを持って入ってきた。
「まずは食事でもどうです?」
その場でコルクが抜かれ、手際よくそれぞれの前に注がれたシャンパンが置かれる。
男はそれを手に取り、軽く掲げた。
それに応じて、私もフルートグラスを手に取って返事をした。
「飲むなよ」
シンの声に、わかってる、と心の中で返す。
用意されたものに口をつけるほど物知らずじゃない。
このあとに出てくるであろう食事も同様だ。
「シャンパンはお嫌いですか?」
「食事をしに来たんじゃないの。私は忙しいから、手短に」
「余裕のない方だ。暗点のボスは不遜であっても優雅な人物だと聞いていましたが、まあいいでしょう」
それはそうだ。シンと比べられても困る。
誤魔化すように小さな咳払いをして、相手を睨んだ。
「単刀直入に言います。実験体を譲っていただきたい」
「実験体?」
「お前もラボで戦った、あいつだ」
シンの言葉に、N109区に来たばかりの頃のことを思い出す。
シンに連れて行かれた先で、共鳴のためだとして、シンが『改造』を依頼していた実験体と戦った。
あんなものを手に入れてどうするつもりなのか。
ハンターの使命感のほうが騒いで、何に使うつもり、と聞きそうになる。
違う、暗点はそんなことは気にしないはずだ。
一呼吸おいて、改めて口を開いた。
「いくら出す?」
「一億。必要ならまだ乗せます」
それは私財なのか、会社の資金なのか。
どちらにしても善良な臨空市民が求めていいものではない。
わざとらしく溜息をついて、テーブルの下で足を組み直した。
「足りないわね。十億よ」
「随分と足元を見られたものだ」
男も溜息をつきながら、こちらに身を乗り出した。
思わず、ドレスの下の銃を確かめる。
「では、三億ならどうです?」
「九億」
「五億では?」
「八億」
その時、タイミングを見計らったかのように、ボーイが前菜を運んでくる。
相手は軽く首を振ると、ボーイを促した。
皿がそれぞれの目の前に置かれる。
「一旦やめましょう。食事が楽しめなくなります」
男はカトラリーの両端を手に取り、前菜に口をつけた。
この前菜も当然食べるつもりはない。
それよりも、ペースを乱されて苛立ちが生まれそうだった。
先に苛立ったほうが足元を掬われる。
平静を装いながら、男がゆったりと食事をするのをじっと睨みつけた。
「前菜もお嫌いですか?」
「生憎、お腹は空いていないの」
男は時間をかけて前菜を平らげ、口元をナプキンで拭うと、もう一度こちらに目線を寄越す。
同時にボーイが再び現れ、前菜の皿を片付けながら、今度はそれぞれの前にスープを置いた。
男はすぐに、やはりゆったりと、スープを掬って口をつけた。
露骨な時間稼ぎだ。趣味が悪い。
指先でテーブルをこつこつと叩きそうになったところで、静まっていたイヤホンに小さなノイズが走った。
「落ち着け」
ノイズ越しに聞こえたシンの声に、気持ちが穏やかさを取り戻していく。
そうだ、ここでの失敗は、私だけの失敗じゃない。
「あの実験体、手間がかかるの」
「ええ、存じています」
「あれを使うほどの重要性が、あなたの『計画』にはあるつもりかしら?」
結局我慢できずに聞いてしまった。
男は口の端を上げながら、カトラリーをスープ皿の端に一度置く。
シャンパンを一口飲んでから、ようやく言葉を紡いだ。
「企業秘密です」
碌な考えではないのは間違いない。
あの実験体に襲わせるのは臨空か、外国か、あるいは暗点か。
男がスープを飲み終えたのを見て、ボーイを呼びつけた。
椅子を引かせながら、おもむろに立ち上がる。
「プレゼンをする気がないなら、これ以上は時間の無駄ね」
「メーンはこれからですよ」
「二度も言わせないで」
カゲトを前、アキラを後ろに歩かせながら、ドアのほうへ近付く。
ボーイがドアを開け、外へ出たところで、後ろにいたアキラが素早く身を返した。
「伏せろ!」
その言葉に、今度はカゲトに抱き込まれ、壁に手を付きながら屈む。
アキラはスタッフルームから出てこようとした相手に向けて引き金を引いた。
短い悲鳴が聞こえる。
その悲鳴を押しのけるように、また一人、スタッフルームから臨戦態勢の黒服が出てくる。
すぐさま服の中の銃を抜き、片足に照準を合わせて撃ち抜いた。
ひゅう、とカゲトが茶化すような声を上げながら私の手を引いて立たせる。
そのまま三人で走り出し、エントランスまで戻ってきた。
けれど運悪く、増援と思しきヘリコプターが窓の外に現れた。
ライトに室内を照らされ、窓ガラスが風圧で軋む。
スタッフルームから現れた黒服たちにも追いつかれる。
ついに追い込まれた、というところで、アキラとカゲトは私を窓のほうへと押しやった。
「ちょっと!?」
「いいから!」
なにが『いい』のか。こんな、敵の眼前で、と思った瞬間、強化ガラスの窓が割れた。
襲いかかってくるであろう破片に警戒して、咄嗟に背を向けて身を小さくしようとしたが、痛みは訪れない。
赤黒い霧のようなものが私の体を覆って、ガラスから守ってくれている。
まさか、と振り返るより先に、背後からそっと抱き竦められた。
「お迎えに上がったぜ、ボス」
イヤホンの内と外から、同じ声が響く。
どうしてここに。体調は大丈夫なのか。
聞きたいことはあったが、今はまだ『ボス』の態度を保とうと、腰に回された手の甲を軽くつねった。
「来るなら来るって言って」
「反省するから、叱らないでくれ」
交渉相手の男は悠々と現れた。
エントランスの様子を見るなり、息を飲んでシンを見つめている。
顔に発疹が出ていなくて助かった。シンが万全ではないことを勘付かれなくて済む。
「あなたがシン……暗点の、N109区の真のボス」
「ボスは彼女だ」
やはり、ここを出るまでこの演技を続けるつもりらしい。
男はにやける口元を隠そうともせず、穏やかに話し始めた。
「では、あなたがただの手先だというのなら、うちへ来てくれませんか。彼女の倍……いや、三倍は出す」
シンの手が顎を撫でたのを感じて、私も後ろ手にシンの頭を引き寄せる。
シンが腰を屈めたことで二人の顔がぐっと近付き、耳に吐息がかかった。
「これは私に絶対服従の狗よ」
「俺はボスを裏切らない。金だけで飼われてるんじゃないんでな」
顎に触れる指が熱い。あまり長く無理はさせられない。
さっさと撤退しなければ。
「交渉は決裂ね。残念だわ」
その言葉が最後通告だった。
背後で再び赤黒い霧が溢れ出すのを察した。
瞬間に共鳴して、あたりは黒一色に包まれる。
見えないけれど、霧に苦しめられているであろう呻き声があちこちで聞こえた。
咄嗟にシンに抱きかかえられ、アキラとカゲトも一緒に飛び降りた。
下には私達が乗ってきた車が停められている。
カゲトが素早く運転席に、その隣にはアキラが乗り込み、私とシンは後部座席に体を預けて、車を発進させる。
走り出してすぐに、シンはこちらにもたれかかってきた。
「無理しないで」
「さすがに疲れたな」
狭いだろうが、シンをそっと膝の上に横たえた。
まだ熱があって苦しいのだろう、眉間に皺が寄っている。
「どうやって来たの?」
「ヘリを飛ばしてきた」
あのヘリコプターがシンのものであることに、アキラとカゲトはすぐに気付いたようだ。
そうだとしても、私達が暗点を発ってからすぐに出発しなければ、あのタイミングでは出てこられないだろう。
なんだかんだ言いながら、結局彼はついてきたのだ。
「私が心配だった?」
「当然だ」
下から手を伸ばしてきたシンが、私の頬を撫でる。
「お前に怪我をさせたんじゃ、今以上に夢見が悪くなる」
その指を絡めてそっと手を降ろし、もう片方の手で頭を撫でた。
気持ちいいのだろうか、ゆっくりと目を閉じていく。
「ゆっくり休んで」
「おやすみのキスは?」
「治るまでお預けだよ」
今はこれだけ、と指先で唇をなぞった。
小さなリップ音を鳴らして、シンはその指先にキスをした。
それにしてもお腹がすいた、と今日のコースを思い出すと同時に、お腹が声を上げて主張する。
私の膝に頭を乗せているシンには案の定聞こえてしまったようで、目を閉じたまま笑みを零した。
「帰ったら、今日以上のフルコースを用意させる」
「それもまた今度でいいよ。あなたと一緒じゃなきゃ、何を食べたって味気ないから」
すぐに寝息が聞こえてくる。
N109区に帰るまで、その頭にずっと手を置いたままだった。

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