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ハンターとヴァンパイア セイヤ編

エピローグ

 それからずっと先。遠い未来の話。
 『私』は天幕に覆われたベッドで目を覚ました。どこか懐かしさの残るビロードだ。
 体を起こしたところで一人の男が入ってくる。私と目が合うなり、彼は目を見開いた。水を湛えた湖面のようにその瞳が揺れる。
「……おはよう?」
「ああ……」
 首を傾げながら声をかけると、彼は傍らに座った。こちらにそっと手を伸ばされ、遠慮がちに触れられる。
「具合はどうだ?」
「長い夢を見ていたみたい」
 そうだな、と彼は笑う。どこか寂しそうな笑顔だった。その声が僅かに震えていた。
「……あんたは何も覚えてないだろうが、俺は」
「セイヤ」
 名前を呼ぶと彼は弾かれたように顔を上げ、ついに決壊した。引き寄せられ、強く抱き締められる。その背中に手を回して、抱擁に応じた。
「久しぶり」
「寝坊にもほどがある」
「あれから何年経ったの?」
「千年は軽く越えてる」
「そんなに?」
 体を放して、涙が流れる頬に触れる。私まで泣いてしまいそうになる。
「約束、守り続けてくれてありがとう」
 ひとりぼっちは寂しいからと終えることを選んだのに、結局セイヤを一人にしてしまった。そう言って謝ると、セイヤは首を振った。
「もうひとりじゃない」
 どちらともなく引き寄せあって、また抱き締め合う。生まれたばかりの赤子のように大泣きして、宥めるように背中を撫でられる。
 もうひとりぼっちじゃないのだ。これからの長い時間を、一緒に生きていける人がいる。
 愛してる、と呟いた言葉は、彼の唇に吸い込まれた。

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