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スキンシップ

「レイってよくキスするよね」
ソファーに並んで微睡んでいたところでその話題を振れば、レイは少し目を見開き、次に少し眉根を寄せた。
「それは、誰と比較しての話だ?」
「比較?」
「誰と比べて、よくキスをする、と思った?」
「別に比較してってわけじゃなくて……強いて言うなら一般論?」
インターネット上に転がっている恋愛体験を拾い読んだだけだ。
それを見た限り、レイの愛情表現はどうにも甘ったるいというか、触れ合いが多い気がする。
もちろん、個人差が大いにあることはわかっているのだけど。
ふむ、とレイは考え込んだあと、目線をこちらに寄越した。
「……赤ん坊というものは」
「え、赤ん坊?」
「興味を引くものがあると、まずじっと見つめる」
言いながら、熱を帯びた視線にじっと見つめられた。
負けじと見つめ返してみたが、レイが絶対に目を逸らさないことは知っている。
案の定、私の方が先に根負けして、レイの背後を見るように目線を逸らした。
「次は触れてみたくなる」
顎に軽く指を添えられて、逸らした目線を戻された。
そのまま長い指で頬や唇を軽く撫でられて、背筋がぞくぞくする。
思わず傍らに置かれたクッションを手にとって、ぎゅっと体ごと抱きしめた。
「では、その次は?」
「し、しらない……」
「唇で触れたり、口に含んでみたくなる」
レイの顔が近付いて、固く目を閉じた。
皺の寄った眉間に、小さくキスが降ってきた。
「……どうして?」
「口の周辺及び口内というのが、赤ん坊にとって最も感覚が鋭い器官だからだ」
「でも、レイ先生は、赤ちゃんじゃないよ」
「ああ。だから」
大きな手のひらで首筋を撫でられて、力の抜けた猫みたいにレイに体を預ける。
そのまま軽く抱き締められて、再び額にキスをされた。
「唇以外でもお前に触れたい」
いつだって甘い言葉をくれる彼に、一生敵わないなと実感する。
いつもレイばっかり余裕があってずるい。
そんな思いが湧いて、まだささやかな反抗を試みた。
「最初の答えになってないよ。大人のレイ先生は、どうしてキスが好きなのか」
レイは小さく笑うと体を少し離して、両手で私の頬を包み込んだ。
強い瞳にまたじっと見つめられて、逃げられなくなる。
「お前に興味があるからだ」
そしてようやく、唇にキスをくれた。

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