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ペリリュー -楽園のゲルニカ-

( 2025/12/06 )

映画の内容的に「おもしろかった」と表現していいのか迷いますが、よくできた映画でした。
太平洋戦争末期のペリリュー島での戦いを描いた作品ですね。
知らなかったんですが、原作漫画が11巻あるそうです。
漫画の内容をどの程度やったのかわかりませんが、2時間でうまくまとまっていたと思います。

さてペリリュー島の戦いについての予備知識が何もないまま行ってしまいました。
物語の始まりは1944年。もちろん翌年の夏に日本が降伏して戦争はひとまず終わりましたな。
その程度の知識があればとりあえず十分です。

「ゲルニカ」というのはかつてドイツ空軍が空爆したスペインの都市の名前ですが、ピカソの絵画のタイトルというほうが有名ですね。
調べてから知ったんですが、ピカソの絵画「ゲルニカ」は反戦や抵抗のシンボルともされるようです。

この映画もそういった内容で、前半はペリリュー島での米軍との戦闘、後半は島に残され潜伏を続ける日本兵たちの葛藤が描かれていきます。
ちなみにこの映画、PG-12です。
比べるものではないですが、ゲゲゲの謎の初回と同じです。
画面はあれと同じくらい赤いと思ってください。

映画全体を通して興味深かったのが、島の自然、動植物や風景、あるいは戦闘機や戦車、戦艦などの美術はかなり緻密に描かれているのに、そこに描かれる人物たちは可愛らしくデフォルメされたキャラであるということですね。
そのデフォルメされたキャラクターたちが戦い、傷つき、死んでいきます。
黒焦げになったり、死体に蛆が湧いたり、そしてやがて白骨化したり…
戦争の描写がかなりきついので苦手な方は見ないほうがいいと思います。

先に話したとおり、前半は島に攻めてくる米軍との戦いです。
主人公はそうとは知らず上陸する米軍を迎え撃とうとしますが、まあ要するに捨て駒にされてるわけです。
それをある先輩に指摘され、命からがら逃げ出して、死体から物資を集めながら、米兵と戦いながら、隠れながらギリギリ生きていきます。
そこで生き残っていた日本兵たちと合流、米軍の補給基地から物資を奪いながら持久戦を決意します。
いつか日本軍が本国から援護に訪れることを信じて。

後半はその持久戦の中、兵士たちは怪我や病気で少しずつ命が失われていきます。
その持久戦は二年ほど続きます。そうです、戦争は終わっています。
けれどそれを知らされることはなく、そして日本兵たちがそれを知ることもできないんですね。
そんな折、ペリリュー島から避難していた現地島民たちが戻ってきた様子を見つけ、米軍の基地から終戦を知らせる新聞を見つけ、戦争は続いているのか?と疑念が生まれ始めます。
アメリカの新聞は作り物だ、日本が負けたはずがない、と追い詰められ、疲弊し、崩壊していきます。
限界に近付いていく彼らは日本兵同士でも争うようになります。
そこで主人公である田丸、吉敷の二人は米軍に投降し真実を確かめようとしますが…
と、まあこんな話です。

こうして彼らは長い戦争を終え日本に帰ります。
生存者34名。日本側の戦死者は10000人を越えていたようです。

ちなみに原作ではもう少し先まで描かれるようですが、映画は田丸たちが帰還したところで終わります。
序盤で田丸は功績係という役割をもらっていますが、この功績係の話は劇中ではあんまりたくさんは出てこないです。
この設定もう少し活かしてほしかった感はあるなあ。
とはいえ全体的にはとても興味深く、考えさせられる映画ではありました。

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